
作陶30周年記念 工藤和彦展 北海道・黄砂のうつわ
期間:2026年9月23日(水・祝)〜9月29日(火)
場所:日本橋三越本店 本館6階アートスクエア
営業時間 午前10時〜午後7時 (最終日午後5時終了)
<< 期間中は全日、工藤和彦が在廊しております。>>
〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
電話 03-3241-3311 (大代表)
私が30年以上、自らが掘り出している北海道北部の剣淵粘土について、理学博士の八幡正弘先生が寄稿して下さいました。
30年前に知ることになった八幡先生の論文は私にとって心の支えでした。この度の個展のために八幡正弘博士に要約して頂きました。八幡博士のご尽力に感謝申し上げます。
論文のポイントしては、粘土に含まれる鉱物(イライト)を分析した結果、ユーラシア大陸由来のもので、剣淵粘土には多く含まれており、黄砂により大陸から日本海を超えて北海道北部に運ばれたものであることを証明した点です。
なお、30年に及び、所有地の粘土をご厚意で提供し続けて下さる地主様には最大の感謝を申し上げます。
大陸から飛来した粘土
剣淵粘土は、北海道北部の剣淵町の丘陵に分布しています。
剣淵粘土は周囲の山から流れ込んできた粒子に加え、大陸から風によって運ばれてきた微細な粘土粒子をとくに多く含む地層の一部で、図のように隆起によって地表に現れました。
丘陵や低地に分布する粘土層は陶芸用の土としても使用されます。この粘土層には遠くユーラシア大陸から風で運ばれてきた黄砂と呼ばれる微細な粒子(広域風成塵*1)が混じっています。地質時代から続いている黄砂現象については、1970年代からのたくさんの堆積物の研究により明らかにされ、日本列島だけでなく、日本海や太平洋の海底でも確認されています*2。大陸起源であることは、堆積物に含まれる石英の酸素同位体組成によって明らかにされ、とくに約7万年前からの寒冷な時代に多く飛来したことが知られています*2。
湖沼には山の風化物が粘土分*3を含んだ土砂となって堆積することが多いのですが、飛来した粒子がたくさん混じることもあります。剣淵粘土とは、約100万年前に形成された湖沼に堆積した堆積物のうち、中頃から後に堆積した粘土層を指し,最後の堆積時期は約4万年前頃です*4。剣淵粘土は石英の他に、イライトやカオリナイトという粘土鉱物を多く含みます。粘土層から微細な石英を分離して酸素同位体を測定した結果、大陸起源であることが明らかとなり、またイライトはカリウム-アルゴン法による年代測定により約2億年前に生成した鉱物で、北海道には分布しない古いイライトであることが示されています*4。
*1 粒子の大きさは一般的には約1000分の20mm以下。
*2 例えば、井上克弘・成瀬敏郎(1990)による論文(第四紀研究, 第29巻3号p.209~222)
*3 粘土粒子の大きさによる区分については分野によって異なり、1000分の2mm以下や1000分の10mm以下など複数の基準がありますが、一般的な“粘土”や粘土層はこれらよりも粗い粒子を少し含んでいます。
*4 八幡正弘・他3名(1997)による論文(地下資源調査所報告, 第68号p.57~79)
理学博士 八幡 正弘
元 北海道立総合研究機構地質研究所 部長